自然環境調査では「猛禽類保護の進め方(環境省自然環境局野生生物課)」に基づいて、タカの仲間(イヌワシ、クマタカ、オオタカ、サシバなど)を調査対象にしています。生息状況を把握し、保護対策等をご提案します。
○行動圏調査
行動圏調査では、調査地域を眺望できる見通しの良い場所を調査地点として、複数の地点に調査員を配置し、出現する猛禽類を追跡・記録します。
解析は「Kernel 法」、「最外郭法」、「ボロノイ分割を用いた方法」により行い、飛翔行動や解析結果からコアエリア等を把握します。面的な把握ができるため、保全対策を検討する際やゾーニングなどに有効です。
○営巣木調査
行動圏(定点)調査で営巣の可能性がある区域を絞り込み、現地踏査により巣の発見に努めます。繁殖期に実施することが多いため、調査頻度、時間に十分注意する必要があります。
○繫殖状況調査
猛禽類の巣・営巣木の使用が特定された場合、繁殖ペアの繁殖状況を調べます。抱卵後期から育雛期にかけての繁殖のコアにかかる時期に行うため、対象の猛禽類に十分配慮して実施する必要があります。
○営巣環境調査
営巣地の樹林構造や架巣環境、営巣木の樹種、高さや巣の大きさなどを調べ、営巣地の環境を調べます。
空間などの猛禽類が巣を造った場所を把握することにより、当該ペアが子育てに利用したコア情報が得られます。コアになる情報ですので保全対策を検討する際に必要不可欠です。
※営巣適地調査
調査エリアにおいて、空中写真などから繁殖の可能性のある樹林や古巣の情報などをピックアップして、
踏査を含めた現地確認を行います。調査計画の立案時、行動圏調査の定点を決める情報や定点調査で死角となってしまう箇所など、営巣地を特定する情報を集める際に実施します。
鳥類調査
鳥類は双眼鏡やスコープによる目視、鳴き声等で確認します。その為に様々な調査法があります。
○ラインセンサス法
調査地区内の鳥類相や個体数を把握するための基本的な調査法です。地区内にあらかじめ設けたいくつかの調査ルート(センサスライン)を時速1.5~2.5㎞程度で歩きながら、目視や鳴き声によって確認した鳥類を種及び個体数と確認位置を記録していきます。また、観察幅(ルートからの距離幅)を設定するなど、一定の条件下で調査することで定量的な評価が可能となり、鳥類相の経年的な比較や解析などにも利用できます。
○定点センサス法
調査者が調査定点にとどまり、周辺に出現した鳥類の種類や個体数、確認位置を記録する方法で展望が広い場所に適した調査法です。通常、調査地区の主要な環境範囲を観測できるよう数ヶ所の定点箇所を設置し、双眼鏡の他、望遠鏡を併用して調査します。
○スポットセンサス法
調査地区内に設定したいくつかの調査ルート上に約250m間隔で調査地点(定点)を設け、定められた時間内に出現した鳥類の種や個体数、出現位置を記録していきます。調査時間や観察範囲といった条件を統一することで定量的な評価や比較などに活用できます。
○その他(応用編)
ラインセンサス法や定点センサス法などの基本的な調査手法を用いて、特定種や指標種を対象とした以下の様な調査に応用しています。
・希少猛禽類調査(繁殖期又は通年)
生態系ピラミッドでも上位種に該当する希少猛禽類を対象に、出現状況や飛翔ルートを記録し、生息状況等を把握します。
・夜行性鳥類調査(主に春季~夏季)
フクロウやヨタカ、トラツグミ、クイナ類等、夜行性鳥類を対象に夜間調査を実施することで調査地区に生息する鳥類相の把握を補完します。
・船上センサス法(主に冬季)
船舶に乗船し、湖沼や海上に生息する水鳥の種類や個体数を記録します。
・シギ、チドリ類調査(主に春季・初秋季)
河川や湖沼、湿地に集まるガンやカモ類等を対象に、出現種や個体数等を記録します。
(左:ミヤコドリ 右:ウミアイサ)
昆虫類調査
調査地域内に生息している昆虫の種数・重要種(環境省・都道府県レッドリスト)を把握するために調査を実施します。
○ビーティング
主に樹上性の昆虫を採集する方法で、樹木の枝葉、草丈の高い草本や花を棒状のもので叩き、採集を行います。
○スウィーピング
主に草本上の昆虫を採集する方法で草本、低木の先端を薙ぐようにすくい、採集を行います。
任意採集による捕獲法
調査地の特性や対象とする魚類に応じて、捕獲に最適な漁具を選びます。
○投網(中型~大型遊泳魚)
生息種や調査地の状況に応じて異なった網目サイズの投網を用意し、水深の浅い場所や開けた水域で使用します。
〇タモ網(小型魚種・底生魚・幼稚魚)
岸際に生育する植物や水草、河床の石の下などに潜む比較的小型の魚類の捕獲に有効です。通常、目合1㎜程度の網を使用し、両生類調査や底生動物調査にも使用します。
〇サデ網(小型魚種・底生魚・幼稚魚)
下流側に網を固定し、水草や河床の石等を動かしながら追い込むように使用します。
トラップ(罠)による捕獲法
任意採集による捕獲法と併用することで、より効果的な調査が実施可能となります。トラップ(罠)には様々な種類があり、魚種や調査地に適した漁具を適宜選択して行います。
〇定置網(一晩:魚類全般)
水深が浅く、流れの緩やかな場所に設置し、上流側に袋網を置いて袖網は片側を岸側に固定したり、ポールや杭などで固定します。
〇刺網(半日~一晩:魚類全般)
生息種や水深等の状況に合わせて異なった目合の刺網を設置します。
〇はえなわ(一晩:夜行性肉食魚・遊泳魚)
水深の深い場所や障害物の多い場所に有効で、太めの釣り糸から餌付きの釣針を10本ほど垂らして設置します。
〇どう(一晩:ウナギ・ナマズ等)
筒状の仕掛けで水深の深い場所や障害物の周辺に餌を入れて設置します。
〇カゴ網(1時間程度:小型魚種・幼稚魚)
流れの緩やかな川底に、市販の練り餌等を入れて設置します。
〇セルびん(1時間程度:小型魚種・幼稚魚)
流れの緩やかな川底に、市販の練り餌等を入れて設置します。
底生動物調査
底生動物とは、川や池の底に生息する水生生物のことを指し、ヤゴ、カゲロウ、カワゲラといった水生昆虫の幼体やエビ、カニといった甲殻類、貝類やミミズ類が該当します。小さな底生動物は環境の変化の影響を受けやすいため、水質、河床状況、水温、流速といった水域環境を調べる上での指標生物となっています。
○定量採集法
特定の環境下で一定面積内の底生動物を採集し、生息種の構成や量を記録します。
淡水域での調査の場合は、膝程度までの水深の瀬で実施しますが、該当する場所がない調査地区では可能な限り流れがある箇所で実施することを心掛けます。基本的にはサーバーネットを用いて調査を実施します。
汽水域で、干潮時に底面が干出あるいは水深が足首程度より浅くなる場所ではスコップや熊手で砂泥をすくい、フルイで濾して生物を採集します。
(左:定量採集法調査道具 右:定量採集風景)
○定性採集法
環境と採集量を定めずに底生動物を採集します。
淡水域では早瀬・淵・湧水・ワンド・ たまり・湛水域・沈水植物群落、汽水域では干潟・潮だまり・転石・ヨシ原・藻場・消波ブロックといったの多様な環境で調査を実施し、調査地域の底生動物相を記録します。基本的にはDフレームネットやサデ網を用いて採集を行いますが、必要に応じてスコップやピンセット、スクレイパーといった他の採集用具を使用することもあります。
(左:定性採集法調査道具) 右:定性採集風景)
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